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市販薬のオーバードーズはなぜ問題に?販売ルールの改正と薬剤師に求められる役割

    市販薬の「オーバードーズ(OD)」が、若者を中心に社会問題となっています。

    厚生労働省は、かぜ薬や咳止め薬などの市販薬を、本来の効能・効果を得るためではなく、感覚や気持ちに変化を起こす目的で、適正な用法・用量を超えて大量に服用するケースが広がりつつあるとして注意を呼びかけています。

    厚生労働省 市販薬乱用防止啓発資材「薬のオーバードーズって何だろう~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~」

    【参照】(小学生向け)薬のオーバードーズって 何だろう ~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~

    【参照】(中高生向け)薬のオーバードーズって 何だろう ~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~

    こうした状況を受け、2026年5月1日からは、市販薬の一部について販売ルールが厳格化されました。
    薬剤師や登録販売者には、購入状況の確認や情報提供など、これまで以上に丁寧な対応が求められています。

    【参照】厚生労働省 医薬品の販売制度

    10月17日から23日まで「薬と健康の週間」があります。
    医薬品を正しく使うことの大切さや、薬剤師など専門家の役割について改めて考える時期でもあります。

    厚生労働省の資料をもとに、市販薬オーバードーズの現状や販売制度の見直し、薬剤師・登録販売者に求められる役割について整理します。

    市販薬のオーバードーズとは?

    「オーバードーズ」とは、医薬品を決められた量を超えて大量に服用することを指します。

    厚生労働省では、かぜ薬や咳止め薬などを症状改善のためではなく、感覚や気持ちに変化を起こす目的で大量に服用するケースを問題視しています。

    市販薬は医師の処方箋がなくても購入できるため、身近な医薬品と感じられやすいものです。

    しかし、
    「市販されているから安全」
    「処方薬ではないから大量に服用しても問題ない」
    というわけではありません。

    医薬品は、決められた用法・用量を守ることを前提に安全性と有効性が確保されています。
    用法・用量を超えれば、身体に重大な影響を及ぼす可能性があります。

    また、市販薬には複数の有効成分が含まれているものもあり、大量服用によって複数成分の影響が重なることもあります。

    なぜ今、市販薬のオーバードーズが問題になっているのか

    市販薬の乱用自体は、最近になって初めて生じた問題ではありません。

    しかし近年、SNSなどを通じて、乱用対象となる製品や体験談などの情報に接しやすくなり、軽い気持ちで乱用に陥りやすいといった状況があることが問題視されています。

    厚生労働省が紹介している研究では、高校生のおよそ70人に1人が市販薬を乱用した経験があるという調査結果があり、特に10代〜20代の若い女性で多いとの報告も示されています。

    【参照】厚生労働省 一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について(薬剤師、登録販売者の方へ)

    ここで注意したいのは、オーバードーズは単に「薬の使い方を間違えた問題」ではないことです。

    厚生労働省の一般向け情報では、つらい気持ちや生きづらさなどを抱え、その気持ちを和らげるためにオーバードーズに至る場合もあることが示されています。

    そのため、対策としては、

    • 「大量に飲んではいけない」と注意する
    • 販売数量を制限する
    • 購入状況を確認する

    だけでは十分とはいえません。

    必要に応じて、本人が抱えている問題に耳を傾け、医療機関や相談窓口などの支援につなげることも重要です。

    2026年5月、市販薬の販売ルールが厳格化

    市販薬のオーバードーズ対策を強化するため、2026年5月1日から医薬品販売制度が見直されました。

    これまで「濫用等のおそれのある医薬品」とされていた医薬品について、新たに「指定濫用防止医薬品」という枠組みが設けられています。

    指定濫用防止医薬品を販売する際には、薬剤師または登録販売者が、購入者に対して、

    • 若年者が購入する場合などの氏名・年齢確認
    • 購入者の状況確認
    • 乱用防止に関する情報提供
    • 他の薬局や店舗での購入状況の確認

    などを行う必要があります。

    さらに、複数個の購入や大容量製品の購入を希望する場合には、その理由を確認することも求められています。
    一定の年齢未満の若年者については、購入できる数量にも制限があります。

    つまり、2026年5月の制度改正では、
    「販売できるかどうか」だけではなく、「誰に、どのような状況で販売するか」
    を確認する仕組みが強化された
    といえます。

    薬剤師・登録販売者は「ゲートキーパー」に

    厚生労働省は、薬剤師や登録販売者に対し、市販薬乱用を防ぐ「ゲートキーパー」となるよう呼びかけています。

    市販薬乱用の起点の一つとなり得るのが、薬局やドラッグストアなどでの購入です。

    そのため販売時には、

    • 購入目的に不自然な点がないか
    • 短期間に繰り返し購入していないか
    • 他店舗でも購入していないか
    • 必要以上の数量を求めていないか

    といった点に注意する必要があります。

    ただし、ゲートキーパーの役割は、購入を断ることだけではありません。

    厚生労働省は、市販薬の乱用に悩んでいる本人や家族から相談を受けた場合について、相談窓口の一覧を渡すだけの機械的な対応だけではなく、必要に応じて相談窓口の担当者につなぐなど、個別の状況に応じた丁寧な対応を求めています。

    薬剤師や登録販売者には、

    • 乱用の兆候に気付く
    • 本人の話を聞く
    • 適切な医薬品の使い方を伝える
    • 必要な支援につなげる

    という役割が期待されています。

    10月17日〜23日は「薬と健康の週間」

    毎年10月17日から23日までの1週間は、厚生労働省、都道府県、日本薬剤師会、都道府県薬剤師会が中心となって実施する「薬と健康の週間」です。

    2026年も例年通り、10月17日(土)から10月23日(金)まで実施されます。

    「薬と健康の週間」は、医薬品を正しく使用することの大切さや、そのために薬剤師が果たす役割について、より多くの人に知ってもらうことを目的としています。

    市販薬のオーバードーズが社会問題となり、販売ルールも見直された今年。

    改めて、

    • 医薬品は用法・用量を守って使用する
    • 市販薬でも専門家へ相談する
    • 症状が続く場合には医療機関を受診する
    • 困りごとを一人で抱え込まない

    といった基本を確認する機会として、「薬と健康の週間」の意味は大きいと考えられます。

    OTC医薬品がより身近になる今こそ「適正使用」が重要

    現在、OTC類似薬の保険給付見直しが進められています。

    【参照】厚生労働省 保険局 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年9月3日 第214回社会保障審議会医療保険部会 資料2)より抜粋

    保険制度が改定されると、市販薬を患者自身が選択する場面が増える可能性があります。

    ただし、「市販薬への関心が高まること」=「オーバードーズの増加」ではありません。
    市販薬を安心して使うためにも、選び方や使い方を知っておくことが大切です。

    OTC医薬品を適切に使用するためには、

    • 症状に合った医薬品を選ぶ
    • 用法・用量を守る
    • 成分の重複を避ける
    • 症状が続く場合は受診する
    • 必要に応じて薬剤師・登録販売者へ相談する

    ことは不可欠です。

    セルフメディケーションの拡大に伴い、医薬品を販売する専門家による情報提供や支援の重要性も高まると考えられます。

    「オーバードーズを防ぐこと」は「販売しない」だけではない

    オーバードーズ対策は、薬局やドラッグストアの販売時対応だけが全てではありません。

    厚生労働省は、小学生や中高生向けの啓発冊子・動画を公開するとともに、薬剤師・登録販売者・学校薬剤師向けに、ゲートキーパーとしての対応マニュアルも用意しています。

    つまり、
    購入時に防ぐ
    だけでなく、

    乱用に至る前に正しい知識を伝える
    困ったときに相談できる場所を知ってもらう
    すでに乱用している人を必要な支援につなげる

    という幾つかの視点で取り組む必要があります。

    薬局は、医療機関を受診していない方とも日常的に接する、地域に身近な場所です。
    そのため、市販薬の正しい使い方を伝えたり、乱用の兆候に早めに気づいたり、必要な支援につなぐ場としての役割も大切だと考えられます。

    市販薬を「安全に使える環境」をつくるために

    市販薬は、ちょっとした体調不良のときに頼りやすい身近な存在です。
    だからこそ、安心して使うための正しい知識も大切です。

    オーバードーズが社会問題となる中、2026年5月には指定濫用防止医薬品の販売制度が見直しがされました。

    これから薬局やドラッグストアには、

    • 医薬品の適正使用を伝える
    • 購入状況を適切に確認する
    • 乱用の兆候に気付く
    • 本人や家族からの相談に対応する
    • 必要に応じて医療機関や相談窓口につなげる

    といった役割が、これまで以上に重要になると考えられます。

    市販薬を必要な人が利用しやすい環境と、乱用を防ぎ安全に使用できる仕組み。

    この2つをどのように両立させるかが、これからのセルフメディケーションを考えるうえで重要な課題ではないでしょうか。

    • 記事を書いたライター
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    medi-up編集部

    実務経験のある薬学部出身者などの医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 薬剤師療界の役に立つ情報を発信中。

    1. 市販薬のオーバードーズはなぜ問題に?販売ルールの改正と薬剤師に求められる役割

    2. 薬剤師は余る?薬学部の定員削減から考える「薬剤師不要論」とこれから

    3. OTC類似薬の保険給付見直しとは?77成分が対象に|薬局・患者への影響を厚労省資料から読み解く

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