市販の解熱鎮痛薬として広く知られるロキソプロフェンについて、第1類医薬品から指定第2類医薬品へのリスク区分変更が議論されています。
厚生労働省は2026年10月29日、薬事審議会医薬品等安全対策部会で、一般用医薬品のロキソプロフェンのリスク区分について審議しました。
対象となっているのは、ロキソニンSなどに使われる経口のロキソプロフェンです。
厚労省の要望申出状況では、現在の区分は第1類医薬品、希望区分は指定第2類医薬品とされています。
【参照】厚生労働省「一般用医薬品のリスク区分変更に関する要望申出状況」(令和8年9月1日時点)
ただし、10月29日の部会では結論には至らず、指定第2類への移行は継続審議となりました。
今回は、
・第1類医薬品と指定第2類医薬品で何が違うのか
・なぜロキソプロフェンの区分変更が検討されているのか
・薬局やドラッグストアの現場にどのような影響が考えられるのか
を整理します。
ロキソプロフェンの指定第2類移行は「継続審議」に
ロキソプロフェンは、2015年1月に第1類医薬品に指定され、現在も薬剤師による販売が必要な一般用医薬品です。
今回、製造販売業者から指定第2類医薬品への移行要望が出され、2026年7月から厚生労働省の審議会で検討が進められてきました。
7月29日の安全対策調査会では、一定の安全対策を講じることを条件に、指定第2類医薬品とすることが適当との意見がまとめられました。
その後、パブリックコメントを経て、10月29日の医薬品等安全対策部会で改めて審議されましたが、最終的な了承には至らず、継続審議となっています。
つまり、現時点では「ロキソニンSが指定第2類になった」ということではありません。
そもそも第1類と指定第2類は何が違う?
今回の議論を理解するうえで重要なのが、第1類医薬品と指定第2類医薬品の違いです。
第1類医薬品は、販売できる専門家が薬剤師に限られ、購入者に対する文書を用いた情報提供が原則として義務づけられています。
一方、第2類医薬品は、薬剤師だけでなく登録販売者も販売可能です。
情報提供は努力義務とされています。
指定第2類医薬品は第2類のうち特に注意を要する医薬品で、禁忌の確認や薬剤師・登録販売者への相談を促す表示、専門家が情報提供を行う場所から一定範囲内に陳列するなどの措置が設けられています。
仮にロキソプロフェンが指定第2類へ移行した場合、販売可能な人の範囲が広がることになります。
なぜロキソプロフェンのリスク区分見直しが議論されているのか
ロキソプロフェンのリスク区分については、過去にも指定第2類への変更が検討されてきました。
2014年の審議では、安全対策調査会でイブプロフェンやアスピリンなど他の解熱鎮痛成分と比べ、より厳しい取扱いを続ける必要はないとの意見が出た一方、医薬品等安全対策部会では、出荷数が多く家庭に常備される可能性があることや、妊娠後期の使用リスクなどを理由に、第1類を維持する判断となりました。
今回改めて検討されている背景には、一般用医薬品としての長年の使用実績や副作用報告などを踏まえて、現在のリスク区分が妥当かを見直す考えがあります。
一方で、ロキソプロフェンは身近な解熱鎮痛薬だからこそ、販売機会が広がった場合の適正使用をどう確保するかが大きな論点になっています。
7月の安全対策調査会では「条件付きで移行可能」と整理
2026年7月29日の安全対策調査会では、ロキソプロフェンを指定第2類医薬品とする方向について、委員間で一定の合意が得られました。
その際には、区分変更とあわせて安全対策を強化することが前提とされています。
たとえば、
・服用量や長期連用への注意喚起
・ロキソプロフェン含有製品であることを分かりやすく表示すること
・出産予定日12週以内の妊婦は服用しないことを明確にすること
・登録販売者向けの教育・研修を充実させること
・区分変更後の販売状況や副作用、適正使用の状況を確認すること
などが論点となっています。
つまり、「指定第2類に変更しても安全性に問題がない」という単純な判断ではなく、販売現場での対策を組み合わせることを前提に検討されている点が重要です。
パブリックコメントには1,338件の意見
今回の区分変更案については、2026年8月25日から9月23日までパブリックコメントが募集され、1,338件の意見が寄せられました。
【参照】厚生労働省「令和8年度第3回薬事審議会医薬品等安全対策部会」資料1-5 パブリックコメントに寄せられたご意見(ロキソプロフェン)(令和8年10月29日)
意見の中には、指定第2類への移行を支持するものだけでなく、購入しやすくなることで不適正使用や副作用リスクが高まるのではないかと懸念する声も含まれています。
また、薬剤師と登録販売者、それぞれの立場から販売体制や情報提供のあり方について意見が示されており、関係団体の考え方にも違いがみられました。
ロキソプロフェンが非常に身近な医薬品であることも、これだけ多くの意見が集まった理由の一つと考えられます。
指定第2類になった場合、薬局・ドラッグストアはどう変わる?
指定第2類への移行が決まった場合、最も大きな変化の一つは、登録販売者でも販売できるようになることです。
現在の第1類では、薬剤師が不在の場合には販売できません。
指定第2類になれば、薬剤師が不在でも、登録販売者が配置されていれば販売できる場面が増える可能性があります。
患者にとっては購入しやすくなる一方で、店舗側では、
・服用できない人の確認
・他の解熱鎮痛薬との重複使用
・妊娠中の使用
・長期間の連用
・副作用が疑われる場合の受診勧奨
などを、これまでと同様に丁寧に確認できる体制づくりがポイントになります。
厚労省の審議でも、登録販売者が適切な説明や受診勧奨を行える体制を確保できるかが論点の一つになっています。
今後の議論で注目したいポイント
現時点では、ロキソプロフェンの指定第2類への移行は決まっていません。
今後の審議では、特に登録販売者による販売体制と安全性をどのように両立させるかが焦点になりそうです。
今回の議論は、ロキソプロフェンだけの問題ではありません。
セルフメディケーションやスイッチOTCの活用が進むなかで、医薬品を購入しやすくすることと、安全に使える環境をどう両立させるのかという、一般用医薬品全体に関わるテーマでもあります。
薬局やドラッグストアでは、区分変更の結論が出る前に何か対策をする必要はないと感がます。
まずは、今後の審議結果や厚生労働省からの正式な通知を見ていくことが大切です。
