OTC医薬品と成分などが類似する医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」をめぐり、保険給付の見直しが具体化しています。
2026年8月27日に開催された厚生労働省の第213回社会保障審議会医療保険部会では、「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」が議題となり、新たに創設される「一部保険外療養」の仕組みや対象となる医薬品、患者負担などが示されました。
厚生労働省の資料では、対象医薬品として77成分・1,042品目が整理され、対象となる薬剤を使用する場合には、通常の自己負担に加えて、薬剤費の4分の1を「特別の料金」として負担する仕組みが示されています。
一方で、今回の制度は
「OTC類似薬をすべて保険適用外にする」
「医療機関を受診せずOTC医薬品を使うよう求める」
といった単純なものではありません。
患者の疾患や治療状況、医薬品の効能・効果などによって、別途負担を求めないケースも細かく整理されています。
今回は厚生労働省の最新資料をもとに、制度の概要と薬局・患者への影響について解説します。
OTC類似薬とは?
「OTC類似薬」という言葉には、現時点で明確かつ共通した定義があるわけではありません。
厚生労働省の資料では、一般用医薬品(OTC医薬品)と医療用医薬品について、成分や効能・効果などのどの要素に着目するかによって「類似」の考え方が異なると整理されています。
今回の保険給付見直しでは、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を基本として、対象となる医薬品の範囲が検討されています。
対象には、解熱・鎮痛、鼻炎、便秘、胃痛・胸やけ、風邪症状、腰痛・肩こり、皮膚症状など、日常的にみられる症状に用いられる医薬品が含まれます。
OTC類似薬をめぐっては、医療保険制度の持続可能性や、医療用医薬品の処方を受ける患者とOTC医薬品を利用する患者との負担の公平性などの観点から、保険給付のあり方が議論されてきました。
2026年5月には、OTC類似薬の薬剤給付見直しを含む医療保険制度改正法が成立し、その後、厚生労働省の技術的検討会において、対象となる医薬品の範囲や患者への配慮、具体的な制度運用について検討が進められています。
【参照】厚生労働省 保険局 第213回社会保障審議会医療保険部会 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年8月27日 )より抜粋
OTC類似薬は「保険適用外」になるのか?
今回の見直しについて、まず押さえておきたいのは、対象となるOTC類似薬が一律に保険適用外になるわけではないという点です。
厚生労働省では、新たに「一部保険外療養」という仕組みを設け、対象となる医薬品については医療保険による給付を維持しながら、患者が通常の自己負担に加えて「特別の料金」を負担する制度が示されています。
つまり、これまでの保険診療の枠組みを残したまま、対象薬剤について追加の負担を求める仕組みです。
厚生労働省の2026年8月時点の資料では、対象範囲として77成分・1,042品目が整理されています。
ただし、対象成分に含まれているからといって、すべての処方で一律に追加負担が発生するわけではありません。
患者の疾患や治療目的、医薬品の効能・効果、長期使用の必要性などによっては、「特別の料金」を求めないケースも想定されています。
そのため今回の制度は、単純に「OTC類似薬を保険から外す」というよりも、保険給付を維持しつつ、一定の場合に追加負担を組み合わせる仕組みと理解するのが適切です。
【参照】厚生労働省 保険局 第213回社会保障審議会医療保険部会 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年8月27日 )より抜粋
患者負担はどのように変わる?
厚生労働省の資料では、対象となるOTC類似薬を使用した場合に患者が支払う「特別の料金」について、対象薬剤の薬剤費の4分の1とする仕組みが示されています。
ここで注意したいのは、「患者の自己負担割合が25%になる」という意味ではない点です。
対象となる薬剤については、これまでの保険診療における自己負担に加えて、薬剤費の4分の1に相当する額を「特別の料金」として別途支払うことになります。
実際に増える負担額は、薬剤の価格や処方内容によって異なります。
一方で、すべての患者や処方に一律で「特別の料金」が生じるわけではありません。
厚生労働省では、
こども、がん・難病など一定の慢性疾患を持つ患者、低所得者、入院患者
などについて、患者への影響に配慮した取り扱いを示しています。
また、処置や手術などに伴って対象薬剤が必要となる場合や、医師が長期使用などを医療上必要と判断する場合についても、一定の要件のもとで「特別の料金」を求めない仕組みが整理されています。
このように、今回の見直しでは対象薬剤だけで患者負担が決まるわけではなく、患者の状況や薬剤を使用する目的などによって取り扱いが異なる点にも注意が必要です。
薬局では患者への説明がより重要に
制度が実施されると、薬局では患者から、これまで以上に負担額やOTC医薬品との違いについて質問を受ける場面が増えると考えられます。
たとえば、
「いつもと同じ薬なのに、なぜ支払額が増えたのか」
「OTC医薬品を購入する場合と、医療機関で処方してもらう場合では何が違うのか」
「自分が使っている薬は追加負担の対象なのか」
といった疑問が想定されます。
今回の見直しでは、対象となる医薬品であっても、患者の疾患や治療目的、長期使用の必要性などによって「特別の料金」を求めない場合があります。
そのため薬局では、単に「対象薬だから追加負担が発生する」と説明するのではなく、制度上の取り扱いを患者ごとに整理して伝えることが重要になります。
また、厚生労働省は今回の制度について、必要な受診を行ったうえで対象となる医療用医薬品が処方された場合に別途負担を求めるものであり、患者に一律にOTC医薬品の利用を求めるものではないと整理しています。
薬剤師には、医療用医薬品とOTC医薬品の違いを説明するだけでなく、患者の症状や治療状況を踏まえて、
OTC医薬品の選択を支援する
必要に応じて医療機関への受診を勧める
患者に適した対応を一緒に考える
といった役割も、これまで以上に重要になると考えられます。
今回の制度見直しは、患者負担の変更だけでなく、薬局における服薬支援やセルフメディケーション支援のあり方にも影響を与える可能性があります。
「保険から外れる」と決めつけないことが重要
OTC類似薬の保険給付見直しについては、患者にとっても関心の高いテーマです。
その一方で、
「OTC類似薬が保険から外れる」
「処方してもらえなくなる」
といった誤解が広がる可能性もあります。
現時点で示されているのは、対象となる医薬品について医療保険による給付を残したうえで、一定の特別料金を追加するという仕組みです。
また、対象患者や対象となる療養についても、例外や配慮措置の検討が続いています。
薬局では、制度の一部分だけを切り取るのではなく、
「何が決まっているのか」
「何がまだ検討中なのか」
を分けて説明することが重要になります。
今後の動きにも注目
OTC類似薬の保険給付見直しについては、対象となる医薬品や患者負担の考え方など、制度の具体像が徐々に明らかになってきました。
一方で、対象医薬品の最終的な指定方法や、「特別の料金」を求めない患者・療養の具体的な取り扱いなど、今後さらに整理される事項も残されています。
薬局にとって今回の見直しは、患者負担の変化だけにとどまりません。
制度開始後には、患者への説明やOTC医薬品に関する相談、セルフメディケーション支援など、日々の業務にも影響する可能性があります。
今後も厚生労働省から通知や資料が公表されることが想定されるため、最新の一次情報を継続して確認していくことが重要です。
制度の内容を正しく理解し、患者から質問を受けた際に、
なぜ負担が変わるのか
どのような場合が追加負担の対象となるのか
どのような場合は追加負担の対象外となるのか
OTC医薬品を利用する場合と何が異なるのか
といった点を、わかりやすく説明できるよう備えておくことが、薬剤師にとって今後重要になると考えられます。


