まとめ
令和6年3月15日、厚生労働省保険局医療課は、昨今の医薬品供給不安から、保険薬局において在庫が用意できない場合は、後発医薬品から先発医薬品、もしくは薬剤料が高くなる後発医薬品への変更調剤を可能とする事務連絡を発出しました。 |
今回、発出された事務連絡によると
1 後発医薬品の銘柄処方において、「変更不可」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合にあっては、患者に対して調剤する薬剤を変更することを説明の上、同意を得ることで、当該処方薬に代えて、先発医薬品(含量規格が異なるもの又は類似する別剤形のものを含む。)を調剤することができる。
2 処方薬の変更調剤を行うに当たって、以下に掲げるものについては、変更調剤後の薬剤料が変更前のものを超える場合であっても、患者に対してその旨を説明の上、同意を得ることで、当該変更調剤を行うことができる(ただし、規格又は剤形の違いにより効能・効果や用法・用量が異なるものを除く。)。
厚生労働省保険局医療課 事務連絡
① 含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤
② 内服薬のうち、類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤がやむを得ずできない場合であって、次に掲げる分類間の別剤形(含量規格が異なる場合を含む。)の医薬品への変更調剤
ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
(例:アに該当する錠剤をイに該当する散剤への変更調剤)
令和6年3月15日 現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについてより引用
後発医薬品から先発医薬品、もしくは薬剤料が高くなる後発医薬品への変更が可能となります。
散剤やドライシロップ剤が欠品している場合は、錠剤やカプセル剤からの変更も可能です。
当然ですが、患者の同意を得ること、規格や剤形による効能・効果の違いについての確認、および、変更調剤を行なった場合には処方箋を発行した医療機関への情報提供が必要です。
医薬品供給不安は、後発品メーカーの不祥事や今年1月に発生した能登半島地震など、様々な理由が重なり、解消が見込めないことが問題となっています。
特に、経口抗菌薬、鎮咳剤、去痰剤はコロナ禍から欠品が続き、最近では抗インフルエンザウイルス剤のオセルタミビルの欠品も相次いでいます。
体調が悪い患者さんが、何軒もの薬局を回って探すなど、不利益な状況にあります。
対策のひとつとして、令和6年度調剤報酬改定において「自家製剤加算」の算定要件に
「当該医薬品が薬価基準に収載されている場合であっても、供給上の問題により当該医薬品が入手困難であり、調剤を行う際に必要な数量を確保できない場合は除く」
「医薬品の供給上の問題により当該加算を算定する場合には、調剤報酬明細書の摘要欄には調剤に必要な数量が確保できなかった薬剤名とともに確保できなかったやむを得ない事情を記載すること」
令和6年1月26日 中央社会保険医療協議会 総会(第581回)議事次第 個別改定項目(その1)について 662-663ページより引用
以上の部分が追加となりました。
(過去記事:【令和6年度調剤報酬改定】医薬品供給体制に配慮か)
小児用の剤形(散剤、ドライシロップ剤など)が不足している場合は、粉砕や脱カプセルなど、調剤上の工夫を行なうことに対する一定の評価とも言えます。
後発品メーカーの不祥事による供給量低下や、限定出荷による医薬品供給不安から、医療機関での過剰な買い込みを招いています。
その結果、必要なところに必要量が回らなくなり、欠品が発生しています。
何より、不利益を被っているのは患者さんです。
厚生労働省は「後発医薬品に係る新目標について」の中で、「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」を掲げていますが、現場での安定供給あっての数値目標です。
安定供給に向けて、後発医薬品産業の再編なども検討されていますが、状況に応じて、今回のような現場に配慮した柔軟な対応は、評価されることではないでしょうか。