まとめ
令和8年度調剤報酬改定では、これまでの「医療DX推進体制整備加算」や「医療情報取得加算」は廃止・統合され、新たに「電子的調剤情報連携体制整備加算」として再編されます。 ※医科・歯科においても「電子的診療情報連携体制整備加算」に変更されます 今回の改定では、単に「ITツールを導入しているか」ではなく、「取得した情報を実際の診療や調剤にどう活かし、医療の質を向上させているか」が問われる段階に入りました。 |
【参照】厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】26ページより抜粋
「電子的調剤情報連携体制整備加算」の最も大きな変更点は、算定要件が大幅に厳格化されたことです。
・マイナ保険証の利用率実績:最上位の加算を算定するためには、直近のマイナ保険証利用率が30%以上であることが必須要件として盛り込まれました。
・電子処方箋の必須化:薬局において、電子処方箋の受付体制が整備されていない場合、加算そのものが算定できなくなる厳しい内容となっています。
システム面以外で現場が対応を急がなければならないのが、「情報発信」と「安全性」の部分です。
・ウェブサイトへの掲示義務: 医療DX推進の体制に関する事項や、マイナポータルを通じた健康管理の相談体制、明細書発行に関する事項などを、自局のウェブサイトに掲載することが原則として義務付けられました。
・サイバーセキュリティ対策:厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠が求められ、特にバックアップ体制や非常時対応の整備が施設基準に含まれています。
電子的調剤情報連携体制整備加算において、最も高いハードルとなるのが実績要件です。
現行の医療DX推進体制整備加算では、マイナ保険証の利用率より3段階とされていましたが、今改定では直近のマイナ保険証利用率が30%以上であることが必須となります。
現場での声かけ、患者が「マイナ保険証の方が便利で安全だ」と実感できるよう、窓口での丁寧な案内や操作サポート体制を強化する必要があります。
また、情報提供への同意により、過去の薬剤情報や特定健診結果が共有され、より質の高い医療を受けられるといった、マイナ保険証を利用するメリットを積極的に伝えていく必要があります。
また、今回の改定で特に注目されているのが、電子処方箋の扱いです。
これまでは電子処方箋は「導入が望ましい」とされていましたが、今改定では状況が大きく変わります。
電子的調剤情報連携体制整備加算を算定するためには、薬局が電子処方箋を受け付ける体制を整備していることが前提条件となりました。
つまり、電子処方箋に対応していない薬局では、この加算自体が算定できなくなります。
電子処方箋は、処方情報を電子的に共有することで、
・重複投薬の防止
・薬剤情報の一元管理
・医療機関と薬局の連携強化
といった効果が期待されています。
一方で、実際の現場では
・医療機関側の導入状況
・システムの運用負担
・患者への説明
など、課題も多く指摘されています。
こうした課題が残る中でも、電子処方箋の普及を一気に進めたいという国からのメッセージとも捉えられます。
これまでの医療DX推進体制整備加算では、
・オンライン資格確認の導入
・システムの整備
といった「設備導入」の評価が中心でした。
しかし、今回の改定では評価の考え方が大きく変わっています。
今後は、
・マイナ保険証の利用実績
・電子処方箋の活用
・調剤情報の連携
といった、実際に医療の質の向上につながっているかどうかが評価のポイントになります。
つまり、「システムを入れているだけの薬局」ではなく「取得した情報を活用して患者の安全を守る薬局」が評価される制度設計になっています。
これは、医療DXが「導入フェーズ」から「運用フェーズ」へ移行したことを示す改定ともいえるでしょう。
これから薬局が対応すべきポイントは大きく4つあります。
・マイナ保険証利用率の向上
利用率30%というハードルは、薬局単独では達成が難しい場合もあります。
そのため、
・受付での積極的な声かけ
・操作サポート
・利用メリットの説明
といった、日常業務の中での取り組みが重要になります。
・電子処方箋の運用体制整備
電子処方箋は、導入するだけではなく
・受付フロー
・患者説明
・医療機関との連携
といった運用面の整備も必要になります。
今後は、電子処方箋が標準になる可能性も高く、早めに対応が重要です。
・情報セキュリティ対策
医療DXが進むほど、サイバーセキュリティの重要性は高まります。
厚生労働省のガイドラインに基づき、
・バックアップ体制
・不正アクセス対策
・非常時対応
など、基本的な情報管理体制を整備しておくことが求められます。
医療機関や薬局で取り扱う個人情報には、病名や処方薬、既往歴などの極めてセンシティブな情報が含まれています。
これらの情報が漏えいした場合、患者のプライバシー侵害だけでなく、医療機関・薬局の社会的信用にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
そのため、医療DXの推進に伴い、情報管理体制の強化がこれまで以上に重要になります。
・医療DX体制の「ウェブサイトでの情報公開」
今改定では、医療DXに関する体制を患者へ分かりやすく情報提供することも重要な要件となっています。
具体的には、
・医療DX推進体制に関する事項
・オンライン資格確認の体制
・マイナポータルを通じた健康管理への対応
・明細書発行体制
などについて、薬局のウェブサイトでの掲示が原則として求められています。
これまで薬局では、施設内掲示のみで対応しているケースも少なくありませんでしたが、今後はウェブサイトを通じた情報公開も重要な役割を担うことになります。
医療DXの推進に伴い、薬局にとってウェブサイトは単なる広報ツールではなく、制度対応や患者への情報提供を行うための重要なインフラになりつつあります。
令和8年度調剤報酬改定では、医療DX関連の加算が大きく見直されました。
これまでの
「システムを導入しているか」
という評価から、
「取得した情報を医療の質の向上にどう活かしているか」
という評価へと変わっています。
マイナ保険証の利用率30%、電子処方箋の対応といった要件は、薬局にとって決して低いハードルではありません。
しかし今回の改定は、医療DXを単なる制度対応ではなく、実際の医療の質の向上につなげていくための転換点ともいえます。
薬局としては、システム導入だけでなく、患者への説明や運用体制の整備を含めた「実務としての医療DX」に取り組んでいくことが重要になるでしょう。


