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【OTC類似薬】保険給付見直しで自民・維新が合意

    まとめ

    2025年12月19日、自民党と日本維新の会は、健康保険適用対象となっている「OTC類似薬」の保険給付制度の見直しについて大筋で合意しました。

    対象はや湿布、解熱薬、胃腸薬などを中心に77成分、約1100品目ついて薬剤費の4分の1に特別料金として患者の追加負担(4分の1)を求める新たな仕組みを設定することで合意しました。

    これにより900億円程度の医療費を削減できる見込みです。

    通常国会で法案を提出し、来年度(2026年度)中に導入する方針です。

    OTC類似薬」とは、薬局やドラッグストアで処方箋なしで購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)と同じ成分・効果を持つ処方薬のことを指します。
    湿布薬や解熱薬、アレルギー薬、胃腸薬などが含まれ、現行の制度では医師の処方があれば健康保険が適用され、患者は薬剤費の1〜3割の自己負担で購入可能です。

    今回の合意では、OTC類似薬の保険適用自体は維持しつつ、指定された約1100品目について、薬剤費の4分の1を患者負担として別途徴収する仕組みを設ける方針が打ち出されました。
    これはいわゆる長期収載品の「選定療養費」の制度に似て、保険給付の一部を削減する形で負担を求めるものです。

    政府・与党は、この特別料金を設定することで医療費の約900億円程度の削減効果を見込み、他の医療費抑制策と合わせると総額で約1,880億円規模の効率化が期待されるとしています。
    来年(2026年)の通常国会で関連法案の提出を目指し、年度中の制度導入を目標としています。

    また、子どもや難病患者、低所得者などの要配慮者には負担増を求めない配慮措置も盛り込む方向で検討されています。

    参照:厚生労働省 保健局 第205回社会保障審議会医療保険部会 OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方について(令和7年11月27日)より抜粋

    この制度の導入については、様々な意見があり、議論がなされてきました。

    国の医療保険制度では、診察が不要な軽い症状に対して保険給付を使うことが医療費の負担を押し上げるとの懸念が伴っていました。
    維新側は、かねてからOTC類似薬を医療保険から完全に除外する案を主張していましたが、自民党側は医療保険の適用除外は急激な負担増を招くとして慎重な立場でした。
    今回の合意はその折衷点といえます。

    また、受診控えによる症状悪化や慢性疾患の自己判断による薬選択のリスクへの懸念が根強く、慎重論が根強いことも今後の課題になります。

    しかし、国の財源には限りがあり、増え続ける医療費が日本の財政に与える影響は無視できません。

    このまま医療費の増加が続けば、現在の医療制度を10年後、20年後、さらには50年後まで安定して維持できるのか、不透明な状況にあるといえるでしょう。

    財務省の令和8年度予算の編成等に関する建議(令和7年12月2日)の中においても、OTC類似薬をはじめとする医薬品について、これまで先送りされてきた負担見直しを進める必要性が明確に示されました。

     

    ⑤ 薬剤自己負担の見直し
    ア)薬剤自己負担の在り方の見直しについて
    現役世代の保険料負担の軽減と質の高い医薬品へのアクセス確保を両立するためには、OTC 類似薬や日常的な疾病管理の中で処方される医薬品などに対する自己負担の在り方を見直すことが必要である。しかしながら、近年の見直しは緩慢なペースにとどまってきた。
    薬剤自己負担に係る改革が先延ばしされてきた結果、効能・効果等が同等であるにもかかわらず、薬局やドラッグストアなどで自らOTC薬を購入する場合と医療機関で OTC類似薬の処方を受ける場合との間で自己負担額に格差が生じており、公平性の観点からも課題がある。
    諸外国の例(医薬品の処方制限、有用性に応じた自己負担割合の設定、定額自己負担)も参考に、必要な医療の保障とのバランスを確保しつつ、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の在り方を見直すべきである。

    参照:財務省 令和8年度予算の編成等に関する建議 令和7年12月2日 財政制度等審議会 資料より抜粋

    議論を先送りにしてきた結果、効能・効果がほぼ同じであるにもかかわらず、

    ・薬局やドラッグストアでOTC医薬品を購入する場合
    ・医療機関を受診し、OTC類似薬を処方してもらう場合

    この二つの間に、患者の自己負担額に大きな差が生じています。

    また、資料の中では
    ・諸外国との外来薬剤費の差
    ・今後も高額医薬品の保険収載が進むこと
    ・OTC類似薬にとどまらない、外来薬剤全体への影響
    などについても触れられています。

    かつて日本にも、薬剤費について、別途、自己負担を求める仕組みが存在したが、高齢者の1割負担の導入や被用者保険の3割自己負担化の過程で廃止されるに至っている。一方、日本の外来薬剤費は諸外国比で高水準であり、今後とも、高額薬剤の保険収載が進むことが見込まれる。
    そのため、特に、日常的な疾病管理の中で処方される薬剤などリスクの高くない医薬品については、別途の自己負担を求めることを改めて議論すべきである。大きなリスクは共助中心、小さなリスクは自助中心で対応していく視点と整合的になるよう、平成14年(2002年)健保法等改正法附則第2条42との関係も含め、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方について、国民的な議論を喚起することが必要と考えられる。
    薬剤自己負担の見直しについてはまた、OTC 類似薬を対象とした限定的な見直しにとどまらず、外来薬剤に関して広く対象として、一定額の自己負担を追加的に求めることも含め、幅広い選択肢について真摯に検討を進め、早急に結論を得るべきである。

    参照:財務省 令和8年度予算の編成等に関する建議 令和7年12月2日 財政制度等審議会 資料より抜粋

    OTC類似薬の保険給付見直しは、医療費負担の在り方を見直す重要なテーマとして位置づけられています。

    新制度が導入されれば、これまで保険で安く処方されていた薬について、患者自身が追加負担を支払うケースが増える可能性があります。
    そのため、医療機関受診と薬局での相談の際に、処方内容や負担額について患者自身が理解したうえで選択することがより重要になるでしょう。

    薬局側においても、受診勧奨するのか、OTC医薬品購入を勧めるのか、状況に応じて明確に説明できる体制づくりが求められます。
    また、その説明行為に対して、選定療養の仕組みが導入された際と同様に、「特定薬剤管理指導加算3のロ」のような指導評価が算定可能となるのか、今後の制度動向にも注目が集まります。

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    medi-up編集部
    実務経験のある薬学部出身者などの医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 薬剤師療界の役に立つ情報を発信中。
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