経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業の経営者が倒産リスクに備えるための有効な手段として広く利用されています。
しかし昨今、この節税効果から、本来の目的とは異なり、節税を目的に加入し毎月拠出し、40ヶ月経過すると任意解約し、その後すぐに再加入するというケースが増えています。
この記事では、経営セーフティ共済の任意解約と再加入について、そして、2024年10月の税制改正で変更になる内容について、わかりやすく説明します。
経営セーフティ共済の任意解約と再加入
任意解約の手続きと注意点
経営セーフティ共済は、任意で解約することが可能です。解約手続きは比較的簡単で、所定の解約申請書を提出するだけです。しかし、解約にはいくつかの注意点があります。
解約返戻金の税務扱い
解約時に受け取る返戻金は課税対象となります。
解約返戻金の金額が大きい場合、一時的に所得が増加し、税負担が増える可能性があります。解約時期による返戻率
解約時の掛金の返戻率は、積立期間に応じて変動します。
例えば、掛金を12ヶ月未満で解約すると返戻率は80%程度ですが、積立期間が長くなると返戻率も高くなります。
長期的に積立を続けた方が返戻金の額が大きくなるため、解約のタイミングには注意が必要です。
再加入の条件と手続き
経営セーフティ共済を任意解約した後、再度加入することも可能です。
ただし、再加入時には、新規加入と同様の手続きが必要です。
掛金の設定や契約内容の確認を再度行う必要があります。
特に、前回の契約とは異なる条件で加入する場合、詳細を確認し慎重に判断することが求められます。
2024年10月の税制改正による変更点
2024年10月からの税制改正により、経営セーフティ共済の任意解約と再加入に関して重要な変更が予定されています。
任意解約後の再加入について
現行制度では、解約返戻金は一時所得として課税されますが、2024年10月からは、経営セーフティ共済の共済契約を解約し、再加入した場合に、その解約した日から2年を経過する日までの間に支出した掛金については、経費(損金)にできないことになります。これは、2024年10月1日以降に既存の契約を解約した時に適用されます。
なぜこのような改正がなされるのか
本制度を運営する、独立行政法人中小企業基盤整備機構の加入者向けアンケートの結果によると、「税制上の優遇措置があるため」という理由が本制度を利用する理由として最も多く、加入→解約→再加入を短いサイクルで繰り返す加入者が多く、本来の趣旨から逸脱しているということが理由のようです。
実は、経営セーフティ共済には、掛金を1年分前納できるという前納制度があり、これによって支払った掛金も経費(損金)にできるというルールになっています。
前納金額の設定
前納できる金額は最大12ヶ月分の掛金までです。
たとえば、月々20万円の掛金設定をしている場合、最大で12ヶ月分、つまり20万円 × 12ヶ月=240万円を前納することが可能です。
前納の手続き
前納する際には、所定の前納申請書を提出し、前納金を一括で支払います。この前納金は支払った年の経費として計上されます。
最大で2年分の掛金を1年の経費(損金)にできる
例えば、新年度になってすぐに任意解約をし、解約後すぐに再加入します。
そうすると、この年度では20万円 × 12ヶ月=240万円を経費(損金)にできます。
これに加えて、この年度の年度末に前納制度を使い、20万円 × 12ヶ月=240万円を前納することで、この年度で合計480万円を経費(損金)にすることができます。
新年度になって任意解約して得られた解約返戻金から最大で480万円を控除できるため、そのほかの大きな支出などと合わせると、長期間にわたって大きな節税効果を得ることができる方法として利用することができる状態といえます。
まとめ
経営セーフティ共済は、本来、中小企業の経営リスクに備えるための重要な制度です。
任意解約や再加入の際には、税務上の注意点や手続きの詳細を理解することが大切です。
また、2024年10月の税制改正により、再加入時から2年間は掛金が経費(損金)として認められなくなるため、これらの変更点を踏まえて計画的に制度を活用することが求められます。
経営者として、経営セーフティ共済のメリットを最大限に引き出し、企業の安定経営を目指すために、最新の税制改正情報を常にチェックし、適切なタイミングでの解約や再加入を検討することが重要です。
この情報を参考にして、賢明な経営判断を行ってください。
追伸 経営セーフティ共済は、これまではうまく活用することで長期間にわたり節税効果を享受できる制度でした。 とはいえ、再加入時からの2年間を最低拠出額の月額5,000円にして、2年経過後から月額20万円にするなどの工夫をすることで、新ルールの範囲内でも大きな節税効果を得られることに変わりはありません。 しっかり理解した上で、ご自身の事業にあった形で活用したいですね! |
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