まとめ
令和8年度調剤報酬改定では、薬局機能の評価体系が大きく見直されました。 これまでの「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」を再編し、薬局が地域における医薬品供給拠点としてどのような役割を果たしているかを評価する制度とされています。 新設された加算の背景や施設基準、実績要件、そして薬局が今後準備すべきポイントについて解説します。 |
今回の改定では、
・地域支援体制加算
・後発医薬品調剤体制加算
という従来の評価体系が見直され、新たに地域支援・医薬品供給対応体制加算として再編されました。
背景には、後発医薬品の供給不安や出荷調整が長期化している現状があります。
これまでの制度では、後発医薬品の使用割合を中心とした評価が行われてきましたが、近年は「使用促進」よりも医薬品を安定的に供給する体制の確保が重要な政策課題となっています。
そのため、薬局が地域において医薬品供給を支える役割を担っているかどうかを評価する制度へと転換が図られました。
地域支援・医薬品供給対応体制加算では、薬局は単なる調剤の場ではなく、地域の医薬品供給拠点としての役割を求められます。
具体的には、
・医薬品供給不足時の対応
・他薬局への医薬品分譲
・医療機関との連携
・在宅医療への対応
など、地域医療を支える機能が評価対象となります。
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、薬局の調剤基本料区分に応じて加算1〜5の5区分に評価体系が設定されています。
【参照】厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】22ページより抜粋
算定の基礎となる「地域支援・医薬品供給対応体制加算1(27点)」では、後発医薬品の使用割合が85%以上であることが基本要件となっています。
これは、従来の後発医薬品調剤体制加算の考え方を一定程度引き継いだものと考えられます。
【参照】厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】21ページより抜粋
また、地域の医薬品供給拠点として重要になるのが、医薬品分譲の実績です。
医薬品が不足した際、地域の他薬局へ薬剤を供給できる体制が整備されているかが評価されます。
医薬品の供給不安などによる入手困難な場合、
・患者を他薬局へ紹介
・医師への疑義照会
・代替薬の提案
など、患者の治療の妨げにならないよう適切な対応が求められます。
重要供給確保医薬品の1ヶ月分備蓄も求められていることから、医薬品卸との適切な関係を維持し、安定供給を確保することも重要な要件となります。
地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準
・地域医療に貢献する体制を有することを示す実績 9項目
※①~⑧は処方箋1万枚当たりの年間回数、⑨は薬局当たりの年間の回数
| 要件 | 基本料1 | 基本料1以外 |
|---|---|---|
| ① 夜間・休日等の対応実績 | 40回以上 | 400回以上 |
| ② 麻薬の調剤実績 | 1回以上 | 10回以上 |
| ③ 調剤時残薬調整加算及び薬学的有害事象等防止加算の算定実績 | 20回以上 | 40回以上 |
| ④ 服薬管理指導料1のイ及び2のイ(かかりつけ薬剤師)の算定実績 | 20回以上 | 40回以上 |
| ⑤ 外来服薬支援料1の実績 | 1回以上 | 12回以上 |
| ⑥ 単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 | 24回以上 | 24回以上 |
| ⑦ 服薬情報等提供料に相当する実績 | 30回以上 | 60回以上 |
| ⑧ 小児特定加算の算定実績 | 1回以上 | 1回以上 |
| ⑨ 研修認定薬剤師による地域の多職種連携会議への出席 | 1回以上 | 5回以上 |
地域医療に貢献する体制を有することを示す実績9項目のうち、算定する加算の区分(加算2〜5)に応じた数を満たす必要があります。
【調剤基本料1の薬局】
地域支援・医薬品供給対応体制加算2(59点):④を含む3つ以上
地域支援・医薬品供給対応体制加算3(67点):①~⑨のうち7つ以上
【調剤基本料1以外の薬局】
地域支援・医薬品供給対応体制加算4(37点):④、⑥を含む3つ以上
地域支援・医薬品供給対応体制加算5(59点):①~⑨のうち7つ以上
そのほか、施設基準として変更もしくは新たに設定された項目に
・調剤室の面積が16平方メートル以上確保されていること (令和8年6月以降に開設・改築・増築する場合のみ適応)
・緊急避妊薬の調剤又は販売を含む女性の健康に係る対応
・セルフメディケーション関連機器の設置(少なくとも3つ)
①体重計
②体温計
③血圧測定器
④体組成計(体脂肪率、 BMI等を含むもの)
⑤血中酸素飽和度測定器(パルスオキシメータ)
⑥握力計
⑦骨密度測定器
・薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを提供していないこと
などが加えられました。
在宅医療が年間24回以上などの実績は、従来からの評価体系と同様に含まれています。
今回の改定は、薬局の評価軸を大きく変えるものです。
今までのように、「処方箋枚数」や「立地」に依存した薬局経営ではなく、
・医薬品供給拠点としての機能
・地域医療への貢献
といった要素が重要になります。
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、こうした方向性を示す制度といえるでしょう。
近年続いている医薬品供給不安は、医療提供体制全体に大きな影響を及ぼしています。
医療機関では処方内容の見直しや代替薬の検討が求められ、薬局では在庫確保や医薬品の分譲、患者対応など業務負担が増大しました。
また患者にとっても、これまで処方されていた医薬品が入手できない、あるいは変更を余儀なくされるケースが発生するなど、医療への安心感にも影響を与えています。
医薬品供給不安は医療機関、薬局、患者の三者すべてに大きな影響を与える課題です。
将来的な医療提供体制を見据え、薬局は地域の医薬品供給を支えるインフラとしての役割をさらに強化していく必要があると考えられます。



