まとめ
令和7年4月の薬価改定を受け、いわゆる「薬価逆転」現象が各地の薬局現場で混乱を招いています。 実際にどのような影響が出ているのでしょうか。 |
【過去記事】

【令和7年度薬価改定】選定療養対象外となる長期収載品が続出?薬剤師が知っておくべき影響と対応策
薬価逆転とは?──なぜ先発品の方が安くなるのか
本来、後発品はコストを抑えた製造により先発品よりも安価で提供されるはずですが、薬価改定の影響で一部の先発品(例:アレグラ錠60mgなど)が逆に安くなる事例が出ています。
これは、長期収載品に対する選定療養の仕組みの導入と薬価調整の結果であり、「先発品=高い」という従来の説明が通じなくなるケースが発生しています。
現場で起きた混乱・困惑のリアル
・「どうして先発品を勧められたのか?」と患者が疑問を抱く
・後発品から先発品に戻す処方変更依頼が医療機関に届く
・「後発品=安い」という説明に対し不信感を持たれる
・処方せん受付時に説明時間が長引く
薬局現場では「説明が難しい」「患者が混乱している」といった声が多く見られました。
薬剤師にとって、薬価改定の影響を的確に伝えるコミュニケーション力が、より求められています。
薬局での対応例と工夫
こうした混乱に対して、いくつかの薬局では次のような対応が取られています。
・「薬価は定期的に変動するため、現時点で安いという判断に過ぎない」ことを説明
・「供給の安定性」や「剤形の選択肢」といった要素も含めて総合的に薬を選ぶよう助言
・医師に処方変更の提案をする際には、患者の意向と制度上の背景をセットで伝える
・店頭掲示や配布資料で、薬価改定と選定療養の仕組みを視覚的に説明
患者に「納得感」を持ってもらうためには、薬の価格だけでなく「なぜその薬を使うのか」の根拠となる部分を伝えることが重要になっています。
今後の薬剤師に求められる対応力
今後も薬価改定は続き、今回のような「薬価逆転」は繰り返される可能性があります。
また、このような混乱を招いたことから、今後の報酬改定では制度自体の見直しや、選定療養の範囲変更も検討されるかもしれません。
薬剤師としては、
・常に最新の情報に触れること
・医師をはじめとした他職種と連携・情報共有を密にすること
・患者に寄り添いながら、制度的な背景もわかりやすく伝えること
これらがますます重要になってきます。
薬価逆転により、薬局現場では制度と実際の運用のギャップに戸惑いが広がっています。
薬剤師が果たすべき役割は、ただ「安い薬を勧める」ことではなく、「患者にとって最適な薬の選択肢を納得感を持って説明する」ことにシフトしつつあります。
今後も、現場の声を共有し、制度の理解に向けて、業界全体で発信していくことが求められています。