まとめ
令和8年度調剤報酬改定が6月1日に施行されました。 なかでも注目されるのが、調剤管理料の大幅な再編です。 一方で、薬剤師が患者の服薬状況を把握し、残薬調整や重複投薬の解消などに実際に関与した場合には、新たな加算で評価される仕組みが整えられています。 調剤管理料の見直しと、今回新設された調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算について、薬局現場への影響を含めて解説します。 |
今改定では、内服薬に係る調剤管理料が大きく整理されました。
改定後の調剤管理料は、内服薬について以下の2区分となります。
・長期処方(28日分以上):60点
・それ以外(27日分以下):10点
厚生労働省の点数表でも、調剤管理料は「長期処方(28日分以上)の場合 60点」「それ以外の場合 10点」と示されています。
これにより、従来のような処方日数ごとの細かな評価は大きく簡素化されました。
特にインパクトが大きいのは、これまで一定の評価があった14日分処方です。
改定後は27日分以下の区分に含まれるため、10点での評価となります。
この変更は、薬局経営にとって大きな影響を与える一方で、国が「単なる日数評価」から「薬剤師の介入実績評価」へ軸足を移したことを示しています。
また、新設された重要項目の一つが、調剤時残薬調整加算です。
これは、患者または家族等から残薬状況を聞き取り、処方医への照会などを通じて調剤日数を調整した場合に評価される加算です。
原則として7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合に算定できますが、薬剤師が必要と判断し、その理由をレセプトに記載すれば、6日分以下の調整でも算定可能とされています。
点数は、実施内容により以下のように設定されています。
・在宅患者に対し、処方箋交付前に処方提案が反映された場合:50点
・在宅患者について調剤日数の変更が行われた場合:50点
・かかりつけ薬剤師により調剤日数の変更が行われた場合:50点
・上記以外の場合:30点
この加算は、残薬を単に確認するだけではなく、実際に処方日数の調整につなげることを評価するものです。
残薬対策は、患者の服薬安全性だけでなく、医療費適正化にも直結します。
薬剤師が患者の生活状況や服薬状況を把握し、必要な処方調整を提案することが、より明確に評価されるようになったといえます。
もう一つの大きな新設項目が、薬学的有害事象等防止加算です。
これは、薬剤服用歴や電子処方箋システムなどを用いた重複投薬の確認等に基づき、処方医へ照会を行った結果、実際に処方内容が変更された場合に算定できます。
厚生労働省の点数表でも、照会の結果として「処方に変更が行われた場合」に算定できることが示されています。
点数は以下の通りです。
・在宅患者への処方提案が反映された場合:50点
・在宅患者について処方変更が行われた場合:50点
・かかりつけ薬剤師による照会の結果、処方変更が行われた場合:50点
・上記以外の場合:30点
ここで重要なのは、単に疑義照会を行っただけではなく、処方変更という結果が求められる点です。
重複投薬、相互作用、副作用リスクなどを見つけ、
薬剤師が薬学的判断に基づいて医師へ提案し、
処方内容が変更される
この一連の対人業務が、今改定では明確に評価されるようになりました。
しかし、薬局現場から次のような不安も出ていました。
「28日分以上の処方を残薬調整で27日分以下に変更した場合、調剤管理料は60点ではなく10点になるのではないか」
この点について、令和8年5月29日付の疑義解釈資料では、長期処方の処方箋について残薬調整により実際の調剤日数が短くなった場合の取扱いが示されています。
【調剤管理料】
問4 内服薬が長期処方(28 日分以上)されている患者であって、残薬の状況が確認されたものにおいて、処方医に対して照会を行い調剤日数の変更が行われる又は処方箋の「調剤する薬剤を減量した上で保険医療機関に情報提供」の欄にその旨の指示があり、減数調剤を行うことにより、実際の調剤する内服薬の投与日数が 27 日分以下となった場合、調剤管理料の1のイ(長期処方(28 日分以上))又はロ(イ以外の場合)のいずれを算定すべきであるか。(答)調剤管理料の1のイを算定する。
【参照】厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について 第3関係法令・通知等(1)共通 3.疑義解釈・訂正通知 疑義解釈資料の送付について(その7)(令和8年5月29日保険局医療課事務連絡 より抜粋
実務上は、長期処方として処方されていた薬剤について残薬調整を行っても、調剤管理料の評価が大きく下がることで薬局が不利益を受ける、という懸念が解消された形です。
例えば
【28日分以上の処方で調剤管理料が60点の対象となるケース】残薬調整を行ない、長期処方(28日分以上)以外の処方日数
(27日以下ですが、残薬調整加算の原則に沿うと21日以下)
→調剤時残薬調整加算 30点を算定本来であれば調剤管理料は10点
調剤管理料 10点 + 調剤時残薬調整加算 30点
合計40点となりますが疑義解釈資料の回答から
調剤管理料 60点 + 調剤時残薬調整加算 30点
合計90点となります。
かかりつけ薬剤師や在宅患者に係る対応であれば、調剤時残薬調整加算は50点となるため、より高く評価されます。
これは、患者の自己負担や医療費の削減につながるだけでなく、薬局にとっても適切な薬学的介入が評価される仕組みです。
まさに、患者・医療保険制度・薬局の三者にとってメリットのある設計といえるでしょう。
今改定では、薬局・薬剤師に対して「実際に患者へ関わり、成果を出すこと」が強く求められています。
今後、薬局・薬剤師が対応すべきポイントは大きく3つあります。
1つ目は、医療DXの活用です。
電子処方箋やマイナ保険証を活用することで、他医療機関の処方情報や過去の薬剤情報を確認しやすくなります。
重複投薬や相互作用を見逃さない体制づくりが重要です。
2つ目は、かかりつけ機能の強化です。
今改定では、かかりつけ薬剤師による対応が大きく評価される場面が設けられています。
単発の服薬指導ではなく、継続的な服薬管理や残薬確認を行うことが、今後の薬局評価につながります。
3つ目は、医師との連携体制の整備です。
残薬調整や薬学的有害事象の防止には、処方医との連携が欠かせません。
疑義照会や情報提供をスムーズに行える体制を整えることで、加算算定だけでなく、患者の安全性向上にもつながります。
今改定における調剤管理料の再編は、薬局経営に大きな影響を与える改定です。
特に、14日分処方など、今まで一定の評価があった処方日数では、点数の引き下げによる影響が避けられません。
一方で、調剤時残薬調整加算や薬学的有害事象等防止加算の新設により、薬剤師が専門性を発揮して、患者の服薬状況により介入した場合の評価は明確に高まりました。
これからの薬剤師に求められるのは、単に処方箋を受け付けて薬を渡すことではありません。
患者一人ひとりの服薬状況を継続的に把握し、残薬を調整し、重複投薬や有害事象を防ぎ、医師と連携して処方内容の最適化に関わることです。
今改定は、薬剤師の専門性が「実際の成果」として問われる時代に入ったことを示しています。
対人業務をどれだけ実践できるかが、これからの薬局の評価と経営を左右する重要なポイントになるでしょう。


